環境配慮導体サイズ選定

 

環境配慮導体サイズ選定
(効果試算)

 

メガソーラ発電所構内配線

ECSO設計プログラム

 

環境と経済性を配慮した
「電線・ケーブルの最適導体サイズ設計(ECSO)」

 

ECSOとは何か?

電線の導体サイズは安全上(許容電流と電圧降下)の規定を満たす範囲内で、イニシャルコストを最小にする観点から、より細いサイズが選定されている。これに対し、最適導体サイズ(ECSO)は、ライフサイクルコストを最小にする観点から、最適なサイズ(より太いサイズ)を選定するものである。このサイズ設計を「ECSO設計」と言い、そのサイズ選定基準が「環境配慮電流表」である。
(注)ECSO:Enviromental & Economical Conductor Size Optimization

写真 は38mm2→100mm2のサイズアップ例
(導体断面積2.6倍、ケーブル外径1.5倍)

 

 

ECSOはCO2排出量の削減に貢献します!

発電所~需要家間の送配電損失(5%)とは別に、需要家構内の各負荷につながる低圧CVTケーブル(工場内多量使用)で4%の電力損失(ジュール損)が生じている。このケーブルの導体サイズ(断面積)を約2倍にアップすると、電力損失は約1/2になり4%→2%に低減、すなわち2%の省エネとなり、その分無駄な電力を発電しなくて済むので、発電時CO2排出量が2%削減できる。

日本に敷設されている低圧CVTケーブルを全てECSOサイズに置き換えた場合、そのCO2削減量は日本の総排出量の0.9%に相当する。

 

 

ECSO設計はどこのどのケーブルに適用するのか?

(1)需要家構内(工場・ビル)の低圧CVTケーブルに適用

電線工業会の電線出荷統計より、電力会社の送配電ケーブル、工場・ビルの低圧CVTケーブル、および住宅のVVFケーブルの布設銅量を推定し、それにケーブルの稼働率を考慮に入れ電力損失率を推定すると、それぞれ5%、4%、1%程度となる。これより、ECSO設計は送配電ケーブルまたは低圧CVTに適用すれば大きな効果につながることになるが、送配電ケーブルの場合、鉄塔や電柱の強度の問題、さらに管路の径などが問題になることから、工場・ビルの低圧CVTのみを対象とする。また、工場・ビルで一部使用の低圧エコケーブル(EM-CET/F)も対象にするが、高圧CVTについては、その布設銅量が極めて小さいため、対象にしない。

 

日本における電力損失の実態

  布設銅量 稼働率 実効通電
銅量
電力損失
(率)
サイズアップ
適用の効果
(布設亘長)
1)送配電ケーブル
(電力会社)
120万トン
(アルミは銅換算)
100%
[常時通電]
120万トン 5% 適用すれば
効果大
[送電:90千km
  配電:1,300千km]
2)低圧CVTケーブル
(ビル・工場)
350万トン 30%
[12時間/日
300日/年
0.7(需要率)]
100万トン 4% 適用すれば
効果大
(1,900千km)
3)VVFケーブル
(住宅)
150万トン 20%
[9時間/日
350日/年
0.5(需要率)]
25万トン 1% 適用しても
効果小
(27,000千km)

 

 

(2)高・中・低のうち高・中稼働の需要家に適用

1)ECSO設計は昼夜間操業の高・中稼働の需要家に適用する。

8つの需要家別の日負荷曲線

 

  • 一般工場・・・・中稼働
  • プラント工場・・・・高稼働
  • 事務所ビル・・・・ 低稼働
  • スーパー・百貨店・・・・中稼働
  • 病院・・・・ 高稼働
  • 大学・研究所・・・・低稼働
  • ホテル・旅館・・・・低稼働
  • その他公共施設等・・・・低稼働

 

2)各日負荷曲線の右上部に、1日あたりの等価通電時間数hと年間稼働日数yを示す。

 

 

(3) 3つの条件を満たすケーブルに限定して適用

ECSO設計は回線全体(又は工場全体)のすべての低圧CVTを対象にするのではなく、「効果のあるところへの重点投資」の考えから、”低減電力損失量(年間)=500[kWh]”を目安として、以下3つの条件を同時に満たすケーブルに限定する。

  1. 最大負荷電流= 30A以上に限定する。
  2. 高・中・低稼働のうち、高・中稼働に限定する。
  3. ケーブルこう長= 30m以上(幹線)、20m以上(分岐) に限定する。

幹線ケーブルの長さ分布幹線ケーブルの長さ分布

 

分岐ケーブルの長さ分布
分岐ケーブルの長さ分布

 

(4)新設・既設のうち新設ケーブルに適用

・新設ケーブルには ECSO設計を適用する。
・既設ケーブルには ダブル配線化を適用する。

ダブル配線化とは?

既設ケーブル(ラックなど付帯設備も含め)はそのまま残し、同一サイズ、同一長さのケーブルを新たに追加並列配線し導体断面積の2倍化を図る方法であり、60㎜2以上の太サイズに限り認められている。

 

ダブル配線化の実施例ダブル配線化の実施例
(三相それぞれに2本づつ配線し、端子の両端に接続している)

 

 

ECSO設計により得られるメリットは?

2つの技術的メリット

  1. 電力損失の低減(ほぼ半減)
  2. 電圧降下の改善(ほぼ半減)

 

3つの経済的メリット

  1. 省エネ効果
  2. CO2削減効果
  3. 節電(ピークカット)効果

 

 

【図の解説】
これは、ある負荷における1日の消費電力曲線を示したもので、導体サイズアップ前の消費電力曲線に対して、導体サイズアップ後の消費電力曲線は ある比率(例えば1~2%)で減少し、その差分の積算電力量(点々部分の面積)が1.省エネ効果(kWh)となり、その節減電力量を発電するために発生するCO2排出量が 2.CO2削減効果(CO2-t)となる。また、導体サイズアップによりピーク電力値が減った分が 3.ピークカット効果(kW)であり、これは次の契約更新以降の電力料金(契約電力の基本料金)の低減につながるものである。

 

経済的メリットの計算結果:(例)高稼働のケース

  最大負荷
電流
〔A〕
導体サイズアップ
(現行サイズ→ECSOサイズ)
3つの効果(ケーブル1000mあたり)増加投資額
回収年数
(年)
  省エネ
(kWh/年)
CO2削減
(CO2-t/年)
ピークカット
(kW)
幹線ケーブル 30 14mm2→38mm2 11,000 5.0 2.3 5.2
40 14mm2→60mm2 23,700 10.7 4.9 4.3
50 22mm2→60mm2 19,300 8.7 4.0 4.2
75 38mm2→100mm2 24,600 11.1 5.1 5.6
100 60mm2→150mm2 26,800 12.1 5.6 7.2
125 100mm2→200mm2 20,700 9.3 4.3 8.9
150 150mm2→200mm2 9,700 4.4 2.0 8.6
175 150mm2→250mm2 20,800 9.4 4.3 8.5
200 200mm2→325mm2 19,300 8.7 4.0 11.6
250 250mm2→325mm2 14,700 6.6 3.1 8.8
300 325mm2→200mm2 (ダブル) 18,700 8.4 3.9 14.4
分岐ケーブル 30 8mm2→38mm2 24,200 10.9 5.0 3.0
40 14mm2→60mm2 23,700 10.7 4.9 4.3
50 14mm2→60mm2 37,000 16.7 7.7 2.8
75 38mm2→100mm2 24,600 11.1 5.1 5.6
100 38mm2→150mm2 52,600 23.7 11.0 4.5
125 60mm2→200mm2 48,600 21.9 10.1 5.7
150 100mm2→200mm2 29,800 13.4 6.2 6.2

 

[備考1]
3つの効果はケーブルの長さに比例するので、こう長に応じ算出できる。
なお、増加投資額回収年数は、こう長に関係なく決まる。

[備考2]
上表の計算ソフトは、(一社)日本電線工業会のホームページを参照のこと。

 

 

 

環境配慮電流表

公称断面積CVTの環境配慮電流(A)
高稼働中稼働低稼働
8mm2 8 9 12
14mm2 13 15 20
22mm2 20 23 31
38mm2 32 37 49
60mm2 55 64 85
100mm2 82 95 127
150mm2 107 124 165
200mm2 151 174 232
250mm2 182 210 280
325mm2 285 329 439
200mm2 ダブル 302 348 464
250mm2 ダブル 364 420 560
325mm2 ダブル 570 658 878
公称断面積EM-CET/Fの環境配慮電流(A)
高稼働中稼働低稼働
8mm2 8 9 12
14mm2 13 15 21
22mm2 21 24 33
38mm2 34 39 52
60mm2 59 68 91
100mm2 88 102 137
150mm2 116 134 179
200mm2 164 189 252
250mm2 196 226 302
325mm2 306 353 471
200mm2 ダブル 328 378 504
250mm2 ダブル 392 452 604
325mm2 ダブル 612 706 942

[備考1]環境配慮電流表は、ケーブルにかかる負荷の稼働状況3つのケースに応じ適用すること。

 

稼働状況日負荷曲線と負荷率1日あたり等価通電時間数年間稼働日数
(1)高稼働のケース 昼間100%、夜間60~80%
(負荷率:約80%)
約16[h/日] 約300日
(2)中稼働のケース 昼間100%、夜間 50%
(負荷率:約65%)
約12[h/日] 約300日
(3)低稼働のケース 昼間のみ100%
(負荷率:約45%)
約9[h/日] 約225日

(1) プラント工場、病院の例
(2) 一般工場、スーパ-・百貨店の例
(3) 事務所ビル、大学・研究所、ホテル・旅館、その他公共施設の例

[備考2] 325mm2を超える場合はダブル配線(電線の並列使用)とし、 その場合、流れる電流が従来設計 に比べほぼ半減となることより導体温度上昇が低く抑えられるので、ケーブル2条間の離隔距離をとる必要はなく密着布設になってもよい。

 

 

 

沿革

1995年6月 IEC287-32-2 規格「Economic Optimization of Power Cable Size」制定。
2008年6月 電線工業会/JECTECが「導体サイズ適正化によるCO2排出量削減に向けての活動」により、日本銅センター賞を受賞。
2009年 導体サイズ適正化による通電ロス低減(省エネ)効果検証のため、電気設備学会・調査研究委員会(第1次)がスタート。(2年間)
2010年 大手電線工場6社での取替え実証試験(10本)がスタート。(3年間)
2010年5月 電線工業会/JECTECが開発した「経済性と環境を考慮した導体サイズ適正化理論」を電気設備学会誌(2010年5月号)に論文発表。
2010年 経済産業省の国際標準開発事業として、中立、使用者、生産者から構成される委員会(第1次)がスタート。(3年間)
2011年 ダブル配線化工事の施工性検討のため、電気設備学会・調査研究委員会(第2次)がスタート。(2年間)
2012年11月 IEC/TC20 東京総会にて、国際規格化の計画が承認。
2013年5月 JCS 4521-1「電力ケーブル環境配慮電流計算」制定。
2013年 国際規格化と国内普及の推進のため、中立、使用者、生産者から構成される委員会(第2次)がスタート。
2014年9月 JCS 4521-1 にEM-CET/F を追加し、規格番号をJCS 4521 として発行。
2014年9月 電線工業会が「導体サイズ適正化によるCO2排出量削減に向けての貢献」により、電気学会電力エネルギー部門研究・技術功労賞を受賞。
2015年1月 電線工業会ほかによる「省エネ・節電(ピーク電力低減)効果に関する研究成果」を電気設備学会誌(2015年1月号)に論文発表。
2015年3月 電線工業会が開発した「環境配慮導体サイズ選定(効果試算)ソフト」をホームページに公開。
2015年11月 環境配慮導体サイズ選定(効果試算)ソフトにEM-CETを追加。
2016年9月 内線規程(JEAC 8001)の本文および資料編にJCS 4521およびECSO設計の考え方が掲載。

 

 

参考文献

  1. 月刊「電気と工事」2013年12月号、pp.45~52「電線の導体サイズ適正化:JCS規格の制定」
  2. 月刊「電気と工事」2013年5月号、pp.48~56「ダブル配線化:事例で比較する工事の実際」
  3. 月刊「電気と工事」2015年1月号、pp.38~44「電線導体サイズ適正化:経済性計算ソフトの開発」
  4. 電気設備学会誌,Vol. 28(2008),No.11,p.873~880
    益尾和彦、久米伸一、原武久:「電線ケーブルの導体サイズアップによるCO2排出量低減効果の検討」
  5. 電気設備学会誌、Vol.30,No.5(2010),p.398~407
    益尾和彦、久米伸一、原武久、大澤靖治:「環境(CO2排出)を考慮した電力ケーブルのサイズ適正化に関する研究」
  6. 電気設備学会・関西支部・講習会資料 (2011年3月)
    原武久,益尾和彦,川田隆之ほか:「経済生と環境を考慮した電線ケーブルの最適導体サイズに関する調査研究(自主研究報告書)」
  7. 電気設学会誌、Vol. 32(2012)No. 11,p.793~796
    経済性と環境を考慮した電線ケーブルの 最適導体サイズに関する調査研究委員会:「経済性と環境を考慮した電線ケーブルの最適導体サイズに関する調査研究」
  8. 電気設備学会誌、Vol. 35 (2015) No. 1 p. 65-74
    益尾和彦,氏家和彦,久米伸一,川瀬賢司ほか:「低圧CVTケーブルの導体サイズアップによる省エネ・節電(ピーク電力低減)効果に関する研究」
  9. 銅と銅合金、Vol.55 No.1(2016), P.250~255
    益尾和彦,川瀬賢司ほか:「電力ケーブルの導体サイズアップによる日本全国の通電ロス低減量・CO2排出削減量」
  10. 電気設備学会誌、Vol.36(2016)No. 15,p.337~345 益尾和彦,川瀬賢司ほか:「低圧CVTケーブルの導体サイズアップによる日本全国の通電ロス低減量・CO2排出削減量の検討」