ニュースリリース

経済産業省 藤木 俊光 製造産業局長 年頭所感

藤木局長

経済産業省 製造産業局 局長

藤木 俊光

 

(はじめに) 

 明けましておめでとうございます。令和4年の年頭に当たり、一言御挨拶申し上げます。

 まず、新型コロナウイルス感染症で健康面や生活面などで影響を受けておられる方々に、心からお見舞い申し上げます。また、産業界の皆さまには、テレワークの推進や時差出勤、職域接種によるワクチン接種の加速など、さまざまな形で御協力をいただき、改めて感謝申し上げます。

 昨年は、先進国を中心にワクチン接種が進み、経済活動の回復の兆しが見えた一方で、東南アジアでロックダウンによるサプライチェーンの混乱が生じるなど、コロナの影響が残る1年でした。こうした中、経済産業省としては、中小・中堅企業の経営支援に全力で取り組むとともに、生産拠点の集中度が高い製品・部素材や国民が健康な生活を営む上で重要な物資の国内生産拠点等整備を促すべく、令和2年度補正予算等において措置した「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」により、これまでの二度の公募で合計約350件、約5,100億円を採択するなど、蓄電池や半導体を含む重要物資のサプライチェーン強靭化を進めてまいりました。

 こうした足下の措置を着実に進める一方で、ポストコロナも見据えた対応も進めていかなければなりません。特に、国際的な脱炭素の流れや人権への関心の高まりなど、サステナビリティに対する認識が強まっているほか、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化や、更なるデジタル化の加速など、製造業をめぐる環境変化は速度を増しており、官民一体となった取り組みが必要です。

 

(2050カーボンニュートラルの実現)

 国際的な脱炭素の流れが加速しています。こうした中、一昨年、わが国も「2050カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言し、昨年には、2030年度の新たな温室効果ガス削減目標として、2013年度からの46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるという新たな方針を示しました。

 これを実現するためには、エネルギー関連分野にとどまらず、自動車、航空機、鉄鋼、化学などのさまざまな産業分野においてチャンレンジをして購入支援を通じた電動車の普及促進、蓄電池の大規模製造拠点の立地や研究開発の推進、さらにはサプライヤー等の業態転換支援など、総合的に取り組んでまいります。また、電動化だけでなく、水素、e-fuelを含む合成燃料などあらゆる技術の選択肢を追求し、幅広くイノベーションを促してまいります。

 さらに、わが国のCO2排出量の約1/4を占める鉄鋼、化学などの基礎素材産業分野における脱炭素化推進に向けた研究開発・調査事業等の支援や、水素航空機・電動航空機といった次世代航空機で求められる技術開発の促進など、個別産業分野の脱炭素に向けた取り組みについてもグリーンイノベーション基金をはじめとしたあらゆる予算措置を活用しながら、強力に推進してまいります。

 

(人権尊重に向けた取り組み)

 近年、国際社会において人権問題への関心が高まる中、企業による人権尊重に向けた取り組みがより一層求められております。昨年10月に開催されたG7貿易大臣会合においては、グローバル・サプライチェーンにおいて強制労働が行われないよう取り組んでいくとの共同声明が取りまとめられました。日本企業は、その原料の調達をはじめとするサプライチェーン全体について、自らの事業における人権に関するリスクを特定し、対策を講じる必要に迫られております。

 こうした中、わが国政府においても、一昨年10月には「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定し、「人権デュー・ディリジェンス」の導入を期待する旨を表明しました。さらに、製造業における先行的取り組みとして、繊維産業においてサステナブルな取り組みを促進すべく、昨年、「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」を設置し、ビジネスと人権への取り組みを含む「持続可能性」に関する取り組みについての報告書をとりまとめました。

 この通り、経済産業省としては、関係省庁や産業界とも連携しながら、企業の人権尊重に向けた取り組みを引き続き推進してまいります。

 

(経済安全保障)

 昨今、AI、量子といった安全保障上のインパクトを有する新興技術や、それを支える先端半導体等の基盤技術を巡る覇権争いが激化しています。さらに、米中をはじめとする主要国・地域が戦略的物資の確保や重要技術の獲得に向けて、巨額の産業政策を打ち出すなど、経済と安全保障が密接不可分な領域における対応が重要になっています。

 このような状況を踏まえ、技術優位性ひいては不可欠性の確保、基本的価値・ルールに基づく国際秩序の維持・強化を掲げ、政府を挙げた対応を進めているところです。経済産業省としては、半導体・重要鉱物などのサプライチェーン強靭化や重要技術基盤の強化、輸出・投資管理による機微技術管理、エネルギーなどの基幹インフラにおける脅威の低減等の取り組みを進め、わが国の経済安全保障に貢献していきます。

 

(デジタル社会の実現)

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、テレワークといった日常生活におけるデジタル化が浸透したことに加え、行政においてもデジタル庁が設置されるなど、社会全体のデジタル化への取り組みが進んでおります。こうした中、わが国製造業においても、非接触や非対面といった「新たな日常」への対応、そして新たな付加価値の創出に向けて、より一層デジタル技術を活用していくことが求められています。例えば、既に自動車産業は「CASE」と呼ばれる潮流の中にあり、自動運転やシェアサービスなどデジタル技術を生かした価値創造が進んでいます。

 また、昨今は、製造業のみならず、小売り・サービス分野等でのデジタル化の進展も顕著になっております。例えば、これまで工場への導入が主だったロボットについても、小売業や物流分野等での普及が進んでおり、生産性の向上や省人化につながっています。これをより一層進めるため、経済産業省では、ユーザー側がロボットを導入しやすい環境、いわゆる「ロボットフレンドリー」な環境の構築に向けた研究開発や実証実験に取り組んでおります。その取り組みの一環として、昨年11月、経済産業省内においても、コンビニエンスストアにバックヤード作業を行うロボットを導入しました。こうした成果も活用しながら、引き続き、更なる環境整備に努めてまいります。

 さらに、ドローンについては、昨年国土交通省が航空法を改正し、本年中に第三者上空での目視外飛行、いわゆるレベル4が実現可能になる予定です。経済産業省としても、複数のドローン同時運航を支えるための運航管理システムの研究開発を実施しており、ドローン運航のための基盤整備を進めているところです。また、セキュリティの確保が求められる政府機関や重要インフラでのドローン活用に向けては、高い安全性や信頼性を確保した安全安心なドローン開発を推進しており、昨年12月には政府や企業向けに機体販売も開始されました。こうした取り組みにより、インフラ点検や離島物流、そして災害対応などさまざまな分野でドローンの利活用が進むことを期待しています。

 「空飛ぶクルマ」については、2025年の大阪・関西万博での商用運航開始を目標とし制度整備を進めるとともに、来年度より社会実装に向けた研究開発プロジェクトを開始する予定です。経済産業省としては、こうした取り組みを通じて、未来の豊かなモビリティ社会を構築してまいります。

 

(賃上げ・下請等取引適正化)

 成長と分配の好循環を生み出す、新しい資本主義を実現していくためには、民間部門による分配の強化が重要です。政府としては、民間企業の賃上げを強力に支援するため、税額控除率を大企業で最大30%、中小企業で最大40%に拡充するなど、思い切った税制措置を講ずることを決定しました。産業界の皆さまにおかれましても、是非御協力いただきたいと思います。

 また、取引先も含む多様なステークホルダーへの分配を実現するためには、サプライチェーン全体での取引適正化や、取引条件の改善も重要な課題です。昨年は、9月を価格交渉促進月間と設定し、セミナーや講習会、広報活動などを通じて、発注側企業に対する取引環境の改善に向けた取り組みの普及・啓発を進めました。

 さらに、各業界団体の皆さまには、昨年改正した下請け中小企業振興法・振興基準の内容等を踏まえた、自主行動計画の策定・改定を実施いただき、取引適正化に向けた自主的な取り組みを進めていただきました。加えて、2020年に導入した、企業が取引先との新たな連携や望ましい取引慣行を遵守することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」の仕組みにおいては、目標としていた2000社を大きく超える企業の皆さまに宣言いただきました。この場を借りて、産業界の皆さまの御尽力・御協力に心より感謝申し上げます。

 今後とも、適正価格での取引の実現やサプライチェーン全体での共存共栄関係の構築を目指し、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みの更なる拡大、実効性の向上に向けて、皆さまと連携させていただきながら取り組んでまいりたいと思います。

 

(福島)

 福島の復興は経済産業省の最重要課題です。一昨年開所した福島ロボットテストフィールドは、「福島イノベーション・コースト構想」の中核となる施設であり、ロボットに加えて、ドローン、空飛ぶクルマといった次世代の空モビリティの研究開発・実証や制度整備等を推進する上で極めて重要な拠点となっています。

 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により延期となっていた「World Robot Summit 2020」を9月に愛知県、そして10月には福島ロボットテストフィールドにて開催いたしました。これはロボットの研究開発及び社会実装を加速するための国際大会であり、福島では3日間で4,000名近くの来場者数を記録、盛況のうちに終了いたしました。今後、同大会の成果も活用しつつ、日本のロボット研究開発拠点としての福島の存在感を国内外に発信してまいりたいと考えています。

 また、福島の復興に向け、経済産業省や復興庁では、福島浜通りへの企業立地や福島浜通りでの実用化開発への補助金、税制等の支援策を用意しています。こうした支援策を活用し、新たなロボット、ドローン、空飛ぶクルマ、さらには、スマートモビリティの開発などが進んでいます。皆さまにおかれましても、御活用とともに、福島浜通りへの進出をご検討いただければ幸いです。

 

(おわりに)

 新型コロナウイルスの感染拡大についてはまだまだ注視が必要な状況ではありますが、経済産業省としては、これまでに述べたようなさまざまな施策を総動員し、産業界の皆さまとも連携しながら、わが国製造業の成長のために全力を尽くしていく所存です。

 最後に、産業界の皆さまの益々の御発展と、本年が素晴らしい年となることを祈念して、年頭の御挨拶とさせていただきます。

 

 

 

一覧に戻る